永住者の取り消しに関するガイドライン策定
さて、今回は前回書ききれなかった永住者の取り消しに関するガイドラインの策定について見ていきたいと思います。
まず最初にこのガイドラインは2027年4月1日から運用が開始され、なぜ策定に至ったのかの経緯を知ってもらえればと思います。
実際のガイドラインのページが見たい方はこちらからどうぞ。
(出入国管理庁HP「永住者の在留資格取り消しに関するガイドライン」)
折角なので永住許可制度のQ&Aも載せておきます。
取り消しのガイドライン策定までの流れ
まず事の発端は2024年の入管法の改正です。そこで永住者の在留資格を取り消すことができる事由として、入管法22条の4第1項第8号と9号が追加されました。元々22条は在留資格の取り消しについて定めていたものです。
施行が2027年4月からですのでまだ現時点で法律文自体は探しても出てきませんでしたが、簡単に内容を書きますと
- (8号)入管法に規定する義務を守らない、または故意に公租公課の支払いをしない場合
- (9号)特定の刑罰法令に違反し拘禁刑になった場合
となっています。
で、この取り消しの施行が2027年4月1日からになるので、それまでに外国人や関係者の予見可能性や処分が適切公平に実施されるために、このタイミングで永住者の在留資格の取り消しに関するガイドラインを策定し公開しました。
では早速ガイドラインの内容を見ていきます。
取り消しガイドラインの内容と目的
永住者の在留資格は許可になった後更新申請の必要が無いため、永住者の要件を許可後に満たさなくなってしまうケースが一部の永住者に見受けられました。それら一部の永住者に永住許可を認め続けるのは、その他大勢の永住者に悪影響を与え不当な偏見を生む恐れがあります。そのため、永住許可の取り消しに関する規定を入管法に設けることとなりました。なお取り消し処分を行った後、当該外国人が日本に在留すべきではないと認める場合を除き、法務大臣が職権で他の在留資格への変更を許可するものとされています。
また、国や地方公共団体の職員による在留資格の取り消し事由に関する入管への通報制度が整備されました。
取り消し事由に該当するかどうかの判断は、個々の事案の具体的な状況に応じて判断されるため、仮に取り消し事由に該当していても一律に取り消される訳ではありません。取り消し事由に該当するに至った経緯や在留状況なども考慮され判断されます。
このガイドラインは法の解釈の指針を明確化し、想定される事例をあげるものと位置づけられています。
(8号)入管法上の義務について(具体例)
入管法上の義務とは、第9章罰則(70条から78条)によりその遵守を担保されているものであり、退去強制事由(入管法第24条)には該当しないものを対象としています。
具体的には
- 在留カードの携帯義務・提示義務
- 在留カードの偽変造
- 偽変造カードの行使・提供・収受などをしない、させない義務
などを指します。
病気や災害その他の事情など正当な理由があればこれらの義務を履行していなくても取り消し事由に該当することはありませんが、履行できなかった事情などについては個別判断となります。
ガイドラインに具体例がありましたので見ていきますと、
- 在留カードの更新をしなかったり、無くしたのに再交付申請をしなかった場合
- 在留カードを携帯しなかったり、提示を求められた時に拒否したりする場合
- 使用目的で在留カードを偽変造しようとしたり、偽変造したカードを実際に使ったり、渡したり受け取ったりしてこれらの行為が未遂だった場合
- 不法入国者であることを知りながら、連行されることを免れさせるため、匿って逃走を助けたり、正規の在留を装うために偽造パスポートを提供したりしてこれらが未遂であった場合
1と2については確かに取り消し事由には該当するのですが、その1度の義務の不履行だけを理由に在留資格を取り消すことは想定していません。
(8号)故意に公租公課の支払いをしないこと
公租とは税金全般を指し、公課とは公的負担金のことを指します。簡単に言うと住民税や所得税、国民健康保険料や年金を指します。手数料や利用料、罰金や過料などは含まれませんので、交通違反の罰金や反則金は含まれません。
また、永住者が経営する法人税の未払いや、申告等が必要なのが明確であるにも関わらず行っていない場合も含みます。
キーワードは『故意』であることで、支払い義務があることを認識しているにも関わらずあえてしない場合には、悪質であると判断されます。収入や財産状況、滞納回数や期間、滞納発生の経緯や発生後の生活状況、本人の言動やその他事情を総合的に判断し、公租公課の支払い意思が無いことが明白と認められる場合には取り消しに至ります。
改正法の施行前に故意に公租公課の支払いを行っていないことが施行後に判明した場合にもこの取り消し事由に該当しますが、施行前の一時点の事情のみをもって直ちに永住取り消しとなる訳ではなく、その後の公租公課の支払い状況なども含めて判断されます。
具体例
取り消し事由に該当する例としては、
- 滞納が長期間であって地方公共団体への届出なく転居するなどして所在不明になっている場合
- 督促や催告を受けているにも関わらず、支払いや支払いに関する相談をしない場合
- 分納や猶予を受けているが、支払い期限までの支払いをせずそれを繰り返している場合
- 脱税などにより有罪判決を受けた場合
- 滞納処分を逃れる目的で、財産の隠蔽や徴収を妨げる不正な行為を行った場合
これらがガイドラインに具体例として書かれており、永住者が経営する法人、または法人の意思決定に実質的な影響力を持つ立場にある者でこれらに該当する場合も取り消し事由に該当します。
一方、該当しない例としては、
- 病気、災害、失業等のやむを得ない事情により支払いができない場合
- 催告等に応じて支払う意思を示しており、分納や猶予措置を受けている場合
- 生活保護に準じた措置を受けている場合
- 給与から天引きされているにも関わらず企業が公租公課を支払っていない場合
が挙げられます。1番の失業については、業績不振やハラスメントなどで離職を余儀なくされてしまった場合を想定していますので、自らの意思で離職し支払えなくなってしまうケースは該当しません。
あくまでも公租公課の支払いをしないことの判断としては、その悪質性を念頭に行われます。もちろん滞納期間や滞納回数も判断材料にもなりますが、前提として『故意』に支払いをしない悪質性をもって取り消し処分となります。よって金額が少額だから大丈夫などの考え方は通用しません。
(9号)特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたこと
9号に該当する罪は以下のものです。
刑法
- (第2編第12章)住居侵入
- (第16章)通貨偽造
- (第17章、第18章、第18章の2、第19章)文書偽造、有価証券偽造、支払用カード電磁的記録、印章偽造
- (第23章)賭博及び富くじ
- (第26章)殺人
- (第27章)傷害
- (第31章)逮捕及び監禁
- (第33章)略取、誘拐及び人身売買
- (第36章)窃盗及び強奪
- (第37章)詐欺及び恐喝
- (第39章)盗品等に関する罪
暴力行為等処罰に関する法律
(第1条、第1条の2、第1条の3)集団的暴行・脅迫・器物損壊、常習的傷害・暴行等
盗犯等の防止及び処分に関する法律
(第2条、第3条、第4条)常習特殊窃盗、常習累犯窃盗、常習特殊強盗致傷
特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律
(第15条、第16条)特殊開錠用具の不法販売・授与、特殊開錠用具の不法所持・指定侵入工具の不法携帯
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(第2条、第6条第1項)危険運転致死傷(無免許運転加重あり)
盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律
(第22条)指定金属切断工具の隠匿携帯
これらの罪により拘禁刑に処せられた場合には、刑期の長短に関わらず該当します。なお、執行猶予が付いた場合も含みます。
在留資格の取り消しに係る通報の考え方
国又は地方公共団体の職員は、在留資格の取り消し事由に該当すると思われる外国人を知った時は、その旨を入管に通報することができます。この条文は通報される側の外国人の守秘義務を解除するための法律上の根拠としての役割があります。
通報自体は義務ではなく任意であり、通報する者が取り消し事由の考え方に基づいて判断します。
通報を受けた入管は、入国審査官や入国警備官が調査や当該外国人からの意見聴取等を行い、事実関係を正確に把握した上で取り消し事由に該当するかを判断し、法務大臣が取り消しの要否を行います。通報があっても直ちに取り消しされる訳ではありません。
通報判断の為の確認事項
- 永住者の在留資格を持っていること
- いずれかの取り消し事由に該当すると考えられること
もっとも、入管法62条の2で永住者以外の在留資格の者も通報することができますので、それ以外の在留資格を持つ者も通報の対象者となります。
取り消し事由に該当すると考えられることの例として分かりやすいのは公租公課の差し押さえ処分です。差し押さえ処分をされるという事は、明確に支払いをしていないことが事実であるため、あとはその滞納が故意かどうか判断するのみとなります。
職権変更と取り消し判断の考え方
取り消し事由に該当した場合には、在留資格を取り消され出国となるか、法務大臣の職権により別の在留資格への変更となるかに分かれます。なおほとんどの変更先としては【定住者】を想定しています。一度【定住者】への職権変更を受けたとしても、再度永住許可の要件を満たせば再度永住許可を受けることは可能です。
8号の入管法上の義務違反については、今後も義務を履行する意思がないことが明らかである場合や、義務違反が社会通念上看過しがたい場合には取り消され出国となります。
具体的には、度々指導を受けているにも関わらず在留カードを携帯せず今後も守る気が無いことが明らかである場合や、偽造在留カードを使用しようとしたり不法入国者であることを知りながら逃走を手助けしようとした場合などは、引き続き在留を認めることが適当ではないため取り消しとなります。
8号のもう一つ、故意に公租公課の支払いをしないことの考え方も同様で、今後も支払いをする意思がないことが明らかである場合や、滞納額や期間、回数等が社会通念上看過しがたい場合には取り消され出国となります。
また脱税等で有罪になった場合にも取り消しとなります。
9号の特定の刑罰法令違反については、過去の犯罪歴等から犯罪傾向が進んでいると判断された場合には取り消し相当となります。常習犯や累犯者が直ちに該当するのではなく、改正前に拘禁刑の前科があり、さらに9号で定められる刑罰法令で拘禁刑に処せられた場合には、引き続き在留を認めることが適当ではないため取り消しとなります。
なお、9号に規定する刑罰法令で拘禁刑に処さられた永住者については、執行が猶予されたとしても在留状況は良好ではないため、初犯であっても職権変更となることが想定されます。
取り消し相当と判断されても、人道上の配慮の必要性や家族関係により職権変更となる場合ももあり得ます。
まとめ
今回は在留資格永住者の取り消し規定について解説してきました。
脱税や拘禁刑に処せられるのは正直論外ではありますが、基本的には悪質性が重視されているという印象です。
義務違反も公租公課の支払い遅れもしないのが一番ですが、反省し繰り返さなければ取り消し対象にはならないというのが印象です。
また、職権変更の道も残されているので個人的には優しいなと考えています。定住者であれば更新の必要性はあるものの、就く仕事に制限はありませんからね。
更新申請では納税課税の証明書などが必要なのできちんと納めなければいけないですし、それで様子を見て、再度永住申請ができるのも優しさの一部だと思います。
まぁもっともその永住許可申請の要件が厳しくなったので何とも言えないところではありますが。
ご不明点、ご相談などあればお気軽にお問い合せフォームよりご連絡ください。
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