在留資格【興行】とは
今回は在留資格【興行】について解説していきます。
というのも、2023年7月31日に読売新聞からこの様な記事が出されたため、この機会に書いておこうと思ったからです。
「興行ビザ」要件、8月から大幅緩和…大物アーティストの長期ツアー容易に(読売新聞オンライン) – Yahoo!ニュース
この記事を読む限り、在留資格【興行】の2号が緩和対象のようです。と言ってもそれ以外に【興行】には1~4号までありますので、それらも含め今回書いていきます。
特徴
『演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他芸能活動』
と在留資格【興行】は定義されています。
在留期間は、3年、1年、6月、3月、15日です。
この在留資格の特徴は、ミュージシャンやハリウッドスター、プロスポーツ選手などが日本でライブやTV・イベント出演、レコーディング、宣伝活動等する際に必要となるものであるという点です。また、いわゆる演者だけでなく、それに同行する演出家、マネージャー、カメラマン、照明・音響スタッフ、コーチなどの方も同じく必要となります。
この【興行】ビザも就労系の在留資格の一つであり、その活動を通じ収入を得ることが重要となります。よって、ギャラ無しの宣伝活動などは、内容自体は【興行】ビザの活動内容の一つですが、【短期滞在】や内容によっては【文化活動】ビザに該当するケースとなります。
活動内容によっては【芸術】や【技術・人文知識・国際業務】の在留資格に当てはまりそうな芸能活動も存在します。『芸術上の活動』や『外国文化に基盤を有する考え方、感受性を必要とする活動』、例えばオーケストラの指揮者が来日公演をするケースです。これは『芸術上の活動』ともとらえることができます。しかしこの場合在留資格【興行】が当てはまります。理由としては、在留資格【芸術】【技術・人文知識・国際業務】の活動内容からは【興行】の活動内容が除かれているからです。
また、在留資格【興行】のような【経営・管理】も存在します。例えば日本で興行を行う会社を経営する場合です。活動内容は『興行に係る活動』であっても在留資格は【経営・管理】となります。
さて、この在留資格【興行】は平成18年に基準省令が改正され厳格化した在留資格です。というのも、歌手やダンサーなどとして日本に入国した後に、結局フィリピンパブでキャストとして接客業務に就くといった不法就労に悪用されるケースが後を絶たなかったからです。このような小規模施設での興行は1号に該当しますが、細分化され非常にわかりにくくなっています。
ということで、1~4号までの中を見ていきましょう。
1号
演劇、演芸、歌謡、舞踏、演奏の興行に係る活動に従事する場合であり、2号の適用対象外となった時とされています。1号は2号の但し書きのような扱いです。
2号
演劇、演芸、歌謡、舞踏、演奏の興行に係る活動に従事する場合であり、基本的にこちらをメインに【興行】は考えていきます。こちらに当てはまらない場合に、1号ではどうかという流れです。
3号
申請人が演劇等の興行に係る活動以外の興行に係る活動に従事しようとする場合です。日本で行われるスポーツの大会、ゲームの大会、ダンス大会などが該当します。日本人が従事する場合に受ける報酬と同額以上の報酬を受けなくてはなりません。
4号
申請人が興行に係る活動以外の芸能活動に従事しようとする場合です。これも日本人が従事する場合に受ける報酬と同額以上の報酬を得る必要があります。商品や事業のプロモーションや日本での映画撮影などもこれに該当します。
では以降の要件の部分で各号の詳しい中身を書いていきたいと思います。
要件
では各号を解説していきます。
上で書いたように1号は2号の但し書きみたいな存在であるということから、まず基本となる2号から解説していきます。
≪2号≫
申請人が演劇等の興行に係る活動に従事しようとする場合は、次のいずれかに該当していること
- 国・地方公共団体の機関や特殊法人が主催する演劇等の興行、又は学校教育法によって規定される学校において行われる演劇等の興行に係る活動に従事する場合
- 主催者の特定と場所の特定がされています
- 文化交流を目的として国・地方公共団体・独立行政法人の資金援助を受けて設立された本邦の機関が主催する演劇等の興行に係る活動に従事する場合
- ここでいう独立行政法人は地方独立行政法人(地方独立行政法人法第2条第1項)は含まれません
- 外国の情景又は文化を主題として観光客を招致するために外国人による演劇等の興行を常時行っている、敷地面積10万㎡以上の施設において当該興行に係る活動に従事する場合
- テーマパークなどで行われる興行を想定しています
- 客席において飲食物を有償で提供せず、かつ客の接待をしない施設(営利目的でない本邦の公私の機関が運営するもの、又は客席の定員が100人以上であるものに限る)において演劇等の興行に係る活動に従事する場合
- 客席において飲食物を提供しないとは、客席で注文を受け飲食物を提供しないという意味であり、客席から離れた売店で飲食物を販売することは制限されていません。ただ、ワンドリンク制のチケットは飲食物の有償提供が前提であるため認められません。
- 接待とは風営法第二条第三項に規定される接待(歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと)を指します
- 当該興行により得られる報酬(団体で行う場合には団体が受け取る金額)が、一日につき50万円以上であり、かつ15日を超えない期間本邦に在留し演劇等の興行に係る活動に従事する場合
- 15日を超えない期間本邦に在留とは、15日間以内の興行に係る活動ではなく、在留自体が15日以内という意味です。有名アーティストが短期間来日することを想定します。
最初に貼った新聞の記事には、2号の4について立ち見を含め飲食物の有償提供を認めるとなっており、また2号の5について滞在日数が30日以内に緩和されたとなっています。
≪1号≫
申請人が演劇等の興行に係る活動に従事しようとする場合は、2号の規定する場合を除き、次のいずれにも該当していること
内容を見ていきたいのですが、( )書きが多いため、読みやすいように色を分けて書いていきます。
- 申請人が従事しようとする活動について次のいずれかに該当していること。ただし、当該興行を行うことにより得られる報酬(団体で行う場合には団体が受け取る金額)が一日につき500万円以上である場合にはこの限りではない
- 削除
- 外国の教育機関において当該活動に係る科目を二年以上の期間専攻したこと
- 2年以上の外国における経験を有すること(海外でかつプロとしての活動経験)
- 申請人が次のいずれにも該当する本邦の機関との契約(当該機関が申請人に対し月20万円以上の報酬を支払う義務を負うことが明示されているもの 『興行契約』)に基づいて演劇等の興行に係る活動に従事しようとするものであること。ただし、主として外国の民族料理を提供する飲食店(風営法第二条第一項第一号に規定する営業を営む施設(キャバレーなど)を除く)を運営する機関との契約に基づいて、月額20万円以上の報酬を受けて当該飲食店において当該外国の民族音楽に関する演奏等に係る活動に従事しようとするときはこの限りではない(当該国の出身者である必要はないが、上記経験を有することが必要)
- 外国人の興行に係る業務について通算して3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいること
- 5名以上の職員を常勤で雇用していること
- 当該機関の経営者又は常勤の職員が次のいずれにも該当しないこと
- 人身取引等を行い、そそのかし、又はこれを助けた者
- 過去5年間に入管法第二十四条第三号の四イ~ハに掲げるいずれかの行為を行い、そそのかし、又はこれを助けた者(不法就労助長行為)
- 過去5年間に当該機関の事業活動に関し、外国人に不正に入管法第三章第一節(上陸審査)もしくは第二節(口頭審理)の規定による証明書の交付、上陸許可の証印もしくは許可、同章第四節(上陸の特例)の規定による上陸許可又は入管法第四章第一節(在留)、第二節(中長期在留)もしくは入管法第五章第三節(強制退去手続き 審査、口頭審理及び異議申出)の規定による許可を受けさせる目的で、文書もしくは図画を偽装し、もしくは変造し、虚偽の文書もしくは図画を作成し、もしくは偽造もしくは変造された文章もしくは図画もしくは虚偽の文章もしくは図画を行使し、所持し、もしくは提供し、又はこれらの行為をそそのかし、もしくはこれを助けた者
- 入管法七十四条から同条の八までの罪(集団密航に関与する罪)又は売春防止法第六条から十三条までの罪(売春の斡旋、場所の提供等売春に関与する罪)により刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者
- 暴力団による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 過去三年間に締結した興行契約に基づいて興行の在留資格を持つ外国人に対して支払い義務を負う報酬の全額を支払っていること
- 申請に係る演劇等が行われる施設が次に掲げるいずれの要件にも適合すること。ただし、興行に係る活動に従事する興行の在留資格を持って在留する者が当該施設において申請人以外いない場合には★印に適合すること
- 不特定かつ多数の客を対象として外国人の興行を行う施設であること(会員制クラブなどは認められないが、ホテル等の宿泊客を対象に限って行われるショーなどの場合は認められる)
- 風営法第二条第一項第一号に規定する営業を営む施設(キャバレーなど)である場合は、次に掲げるいずれの要件にも適合していること
- 専ら客の接待(風営法第二条第三項に規定される接待)に従事する従業員が5名以上いること
- 興行に係る活動に従事する興行の在留資格を持つ外国人が客の接待に従事するおそれがないと認められること
- 13㎡以上の舞台があること
- 9㎡以上の出演者控室があること(演者が5名を超えるときは、一人につき1.6㎡を加えた面積)
- 当該施設の従業員の数が5名以上であること
- ★当該施設を運営する機関の経営者又は当該施設に係る業務に従事する常勤の職員が次のいずれにも該当しないこと
- 人身取引等を行い、そそのかし、又はこれを助けた者
- 過去5年間に入管法第二十四条第三号の四イ~ハに掲げるいずれかの行為を行い、そそのかし、又はこれを助けた者(不法就労助長行為)
- 過去5年間に当該機関の事業活動に関し、外国人に不正に入管法第三章第一節(上陸審査)もしくは第二節(口頭審理)の規定による証明書の交付、上陸許可の証印もしくは許可、同章第四節(上陸の特例)の規定による上陸許可又は入管法第四章第一節(在留)、第二節(中長期在留)もしくは入管法第五章第三節(強制退去手続き 審査、口頭審理及び異議申出)の規定による許可を受けさせる目的で、文書もしくは図画を偽装し、もしくは変造し、虚偽の文書もしくは図画を作成し、もしくは偽造もしくは変造された文章もしくは図画もしくは虚偽の文章もしくは図画を行使し、所持し、もしくは提供し、又はこれらの行為をそそのかし、もしくはこれを助けた者
- 入管法七十四条から同条の八までの罪(集団密航に関与する罪)又は売春防止法第六条から十三条までの罪(売春の斡旋、場所の提供等売春に関与する罪)により刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることが無くなった日から5年を経過しない者
- 暴力団による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
1号はとても細かく規定されていることが特徴的です。主として小さな規模で興行を行う外国人の方に該当します。例えばライブハウスやレストランでコンサートに出演する方や、キャバレーなどでダンスショーに出演する方、ショーパブでのパフォーマーなどです。
≪3号≫
申請人が演劇等の興行に係る活動以外の興行に係る活動に従事しようとする場合は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同額以上の報酬を受けて従事すること
日本で開催される演劇等以外の興行に従事する場合にはこちらが適用されます。ここでのポイントは日本人が従事する場合に受ける報酬と同額以上の報酬を受けることとされている点です。この報酬は日本国内で支払われる必要ななく、本邦の公私の機関が支払う必要もありません。しかし、海外で支払われた場合でも日本人への報酬が基本になるのは面白い点でもあります。
また、報酬が大会の上位入賞者にしか賞金として支払われない場合や、順位や入場者によって変動する場合においても、支払いを受ける条件が日本人と同等以上であれば適合すると解釈されます。
≪4号≫
申請人が興行に係る活動以外の芸能活動に係る活動に従事する場合は、申請人が次のいずれかに該当する活動に従事し、かつ日本人が従事する場合と同等以上の報酬を受けること
- 商品又は事業の宣伝に係る活動
- ファッションショーや見本市などに係る活動が該当します。
- 商品や事業の宣伝に使われる写真の撮影や、動画の撮影などもこちらに該当します。
- 放送番組又は映画の製作に係る活動
- 出演者としての活動のほか、監督や制作者、脚本家としての活動も含まれます。
- 日本の放送局や映画会社が制作するものに限られず、日本で放送されない番組や上映予定のない映画の製作も認められます。
- 商業用写真の撮影に係る活動
- ポスターの撮影や雑誌に載せる写真撮影が該当します。
- 撮影する写真が商品や事業の宣伝に用いられる場合には1の活動内容と被りますが問題ありません。
- 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動
- レコーディングやブルーレイ、DVDなどに録画録音するための活動です。
必要書類などは以下のリンクに記載があります。
まとめ
今回は在留資格【興行】について書いていきました。
正直申請する頻度は多くはありませんが、非常に複雑というか細かい在留資格です。やはり、過去に不法就労などに悪用されていたという事実が、そうさせてしまったんでしょうね。
2023年8月から緩和されるということで今回書き始めましたが、これがきっかけでまた悪用されてしまったら、より一層複雑な申請、難易度が高い申請になってしまうのではないかと若干懸念しております。
このビザ申請をしたい、イベントを考えているという事業者様は、まずきちんと要件を確認しないといけません。チケットを発売してから『実は許可要件を満たしていませんでした』みたいなことになってしまわないように注意しましょう。
何かご不明点、ご相談などあればお気軽にお問い合わせください。
川崎・横浜エリアのビザ申請なら
And-U行政書士事務所
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