在留資格【高度専門職】とは
今回は在留資格【高度専門職】について解説していきたいと思います。
この在留資格は平成26年の入管法改正によって新しく創設された在留資格です。【高度専門職】という名前の通り、高度な専門的能力を有する外国人の方用の在留資格であり、それまで在留資格【特定活動】の一部であった高度人材に対する在留資格を独立させるような形で創設されました。【高度専門職】には1号と2号があり、それぞれ申請の要件が異なります。では早速見ていきたいと思います。
特徴
この在留資格の特徴は、1号・2号に分かれている点と、申請するにあたりポイントを数える必要がある点、この在留資格に認められた優遇処置があるという点が挙げられます。また、一口に【高度専門職】と言っても、活動の内容によりイ・ロ・ハの3種類に分かれています。
高度専門職イ・ロ・ハ
まず【高度専門職イ】ですが、これは『日本の公私の機関との契約に基づいて行う、研究、研究の指導または教育を行う活動』が該当します。在留資格【研究】【教授】【教育】のパワーアップ版と考えてください。
次に【高度専門職ロ】ですが、これは『日本の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動』と定められています。在留資格【技術・人文知識・国際業務】の【国際業務】部分を除いたパワーアップ版に当たります。
最後に【高度専門職ハ】ですが、これは『本邦の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動』とされています。在留資格【経営・管理】のパワーアップ版に当たります。
高度専門職のポイント制度とは?
この在留資格はあくまでも高度な人材の受け入れを推進していくものであります。そのため、どの程度高度な人材なのかを数値化する必要があります。よって、学歴・職歴・年収などの各項目にポイントを振り分け、その合計が一定の点数(70点)を超えるか否かによって申請の可否が決まります。ただし、このポイントを満たしていればいいという訳ではなく、あくまでも就労の在留資格に関する要件(在留資格該当性・上陸許可基準適合性)を満たすものの中から、高度外国人人材を認定するような仕組みとなっています。
特別高度人材制度(J-Skip)とは?
2023年4月から特別高度人材制度(J-Skip)が導入されました。これまでの高度人材ポイント制度とは別途、学歴又は職歴と、年収が一定水準以上であれば【高度専門職】の在留資格を付与し、『特別高度人材』として高度人材ポイント制の優遇処置に加え、拡充した優遇処置を受けられます。
高度専門職イ・ロの活動内容では、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- 修士号以上を取得かつ年収2,000万円以上
- 従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上
高度専門職ハの活動内容では、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- 事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ年収4,000万円以上
優遇処置の内容
特別高度人材として認められた場合、特別高度人材証明書が交付され、在留カードの裏面に『特別高度人材』と記載されます。
在留資格【高度専門職1号】の場合
- 複合的な在留活動の許可
- 在留期間5年の付与
- 在留歴に係る永住許可要件の緩和(1年の在留に短縮)
- 配偶者の就労
- 一定条件下での親の帯同
- 一定条件下での家事使用人の帯同
- 大型空港等に設置されているプライオリティレーンの使用
- 入国・在留手続きの優先処理
在留資格【高度専門職2号】の場合(【高度専門職1号】(特別高度人材)で1年以上活動を行っていた方が移行できる在留資格)
- 【高度専門職1号】の活動と併せてほぼすべての就労資格の活動を行うことができる
- 在留期間が無期限となる
- 上記3~7までの優遇処置が受けられる
永住申請の基準が大幅緩和され、1年の在留で永住許可申請ができる
出入国在留管理庁ホームページ「特別高度人材制度(J-Skip)」
高度専門職1号と2号
在留資格【高度専門職】には1号と2号が存在します。イメージとしては特定技能の1号と2号の関係でしょうか。
特定技能と同じように、高度専門職の2号になるには、1号からの変更申請を行うしか方法はないです。
優遇処置は、もちろん2号の方が手厚くなります。優遇処置に関しては次で書いていきます。
高度専門職1号と2号の優遇処置
まずは基本となる1号の優遇処置についてです。
- 複合的な在留活動の許可
- 在留期間5年の付与
- 在留歴に係る永住許可要件の緩和(ポイントが80点以上だと1年、70点以上だと3年の在留に短縮)
- 配偶者の就労
- 一定条件下での親の帯同
- 一定条件下での家事使用人の帯同
- 入国・在留手続きの優先処理
先に軽く書いてしまっていましたが、これらの優遇処置が受けられます。
2号の優遇処置
- 【高度専門職1号】の活動と併せてほぼすべての就労資格の活動を行うことができる
- 在留期間が無期限となる
- 上記3~6までの優遇処置が受けられる
となっています。
この中で少し解説を加えます。
『複合的な在留活動の許可』・・・例えば、高度専門職1号イで、研究機関に勤め研究員を行っている方がいるとします。その専門知識や技術を用いる会社を経営することが認められるということです。本来であれば会社経営などは【経営・管理】の分野の在留活動ですが、この【高度専門職】であれば在留資格的にはOKとなります。
『配偶者の就労』・・・【高度専門職】の在留資格を持つ方の配偶者の方は、【特定活動33号】の在留資格を取得することにより、学歴等の要件を満たしていなくてもフルタイムでの就労が認められます。配偶者のビザの代表格である【家族滞在】では、【資格外活動許可】を受けた上で、週に28時間以内の就労しか認められません。【特定活動33号】でのフルタイム勤務には条件があります。
- しっかりと【高度専門職】の方との婚姻関係を証明できることです。
- 日本で就職先が決まっていて、かつ【研究】【教育】【技術・人文知識・国際業務】【興行】に関連する業務内容であること。
- 【高度専門職】の方と同居していることです。
【家族滞在】と異なり、業務内容に制限があるのが特徴です。
『一定条件下での親の帯同』・・・【高度専門職】は親を呼ぶことができる数少ない在留資格です。呼べる条件としては以下の通りです。
- 世帯年収800万円以上(企業からの報酬のみ算入 手当や投資での利益などは除く)
- 同居すること
- 本体者または配偶者のどちらかの親に限る
- 子どもが7歳未満であること
なお、呼ぶ名目は【高度専門職】で在留する7歳未満の子どもの子育て支援となります。よって、その子供が7歳以上になった場合には親は帰国しなくてはなりません。
要件
ではここからは【高度専門職】申請要件について書いていきます。
まず上陸許可基準についてです。
- 法務省が定める高度専門職基準省令で定める基準に適合していること(ポイントが70点以上あること)
- 次のいずれかに該当すること
- 本邦において行おう活動が入管法別表第一の一の表の教授の項から報道の項までの下欄に掲げる活動のいずれかに該当すること
- 本邦において行おう活動が入管法別表第一の二の表の経営・管理の項から技能の項までの活動に該当し、かつ、この表の当該活動の項の下欄に掲げる基準に適合すること
- 本邦において行おうとする活動が、我が国の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと
この上陸許可基準は【高度専門職1号】のイ~ハまですべてに共通しています。一方で【高度専門職2号】の上陸許可基準は定められていません。それは1号からの変更申請しか認められていないからです。
【高度専門職2号】への変更要件は、
- 高度専門職1号で3年以上活動を行っていること
- 申請時にポイントが70点以上であること
- 素行が善良であること
- 当該外国人の在留が日本の利益になると認められること
- 本邦において行おうとする活動が、我が国の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと
となっています。
では、ここからは【高度専門職】のイ~ハまでの変更要件を見ていきます。といっても基本的には各高度専門職は、現在運用されている在留資格のパワーアップ版であることには違いないので、該当する在留資格の変更要件とそんなに変わりません。もちろん【高度専門職】であるので、ポイント表で70点以上を求められるのは言うまでもありません。申請時には、自身のポイントが70点以上あることを証明する資料の他、イ~ハの業務に当たることを説明する必要があります。
出入国在留管理庁ホームページ「高度専門職 手続きの流れは? 必要な申請書類は?」
まとめ
今回は在留資格【高度専門職】について簡単に解説してきました。
この在留資格を持っていると優遇処置を受けられるため、非常にメリットの大きい在留資格と言えます。一方で、この在留資格ではパスポートに指定書を貼られますので、転職を行う場合には改めて申請を行う必要があるなど、多少不便な部分が存在します。しかし、その不便な部分があったとしても、取得するメリットは大きいと思います。
何かご不明点、ご相談などあればお気軽にお問い合わせください。
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