在留資格【特定技能】とは
今回は【特定技能】のビザについて解説していきます。
比較的最近できた在留資格の一つで、企業でも積極的に採用を進めている就労ビザの一つです。今まで就労ビザと言えば【技術・人文知識・国際業務】や【技能】、毛色は多少変わりますが【経営・管理】が一般的でしたが、この【特定技能】のビザができたことから、外国人材の就労環境がガラリと変わりました。
今回は、具体的にこのビザで何ができるのか、どのような業務に従事できるのかという点から、申請上の特徴などを説明していきたいと思います。申請書類も多く、多少複雑な面もありますので、なるべく分かりやすくかみ砕いて説明していきます。
特徴
このビザは、2019年に新しく成立しました。特定技能制度のコンセプトとしては、『深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取り組みを行っても人材確保が困難な状況にある特定の産業分野で、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れていくもの』です。つまり、人材確保が困難な状況に陥ってしまっている特定の産業において、外国人労働者の受け入れを広げていこうという試みです。
【特定技能】ビザには、特定技能1号と特定技能2号の2種類が存在します。
- 特定技能1号⇒特定の産業で相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
- 特定技能2号⇒特定の産業で熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
その他にも、以下のような違いがあります。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
在留期間 | 1年、6月、4月ごとの更新。通算で5年間まで更新可能。 | 3年、1年、6月ごとの更新。通算5年間という上限なし。 |
受入れ分野 | 全12分野 | 2分野のみ(これから拡大予定) |
日本語能力 | JLPTのN4レベル、もしくはJFTのA2レベル。又は技能実習2号を良好に修了していることが必要。 | 試験などでの確認は不要 |
技能レベル | 各分野の試験に合格、又は技能実習2号を良好に修了していることが必要。 | 熟練した技能を有しているか試験を受ける。さらには監督者として他の従業員への指導経験なども問われる。 |
家族を呼べるか | 原則的に不可 | 家族滞在ビザで呼び寄せ可能 |
受入れ機関等のサポート | 必要 | 不要 |
特定技能2号は、2022年5月に取得第一号がニュースになったように、まだこれからの在留資格です。認められている産業自体も、現時点(2022年6月現在)ではまだ2種類(建設分野、造船・舶用工業分野)しかないことから、今回は特定技能1号を中心に書いていきます。(以下、特定技能=特定技能1号と捉えてください。)
特定技能を受け入れられる特定産業分野とは
特定技能は、どんな分野の企業でも受け入れられる訳ではありません。以下が受け入れられる産業分野です。
- 介護分野
- ビルクリーニング分野
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
- 建設分野
- 造船・舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
- 農業分野
- 漁業分野
- 飲食料品製造業分野
- 外食業分野
今までは14分野あったのですが、3番の形に統合され12分野になりました。
技能実習ビザとの比較
よく技能実習ビザと特定技能ビザを混同されてらっしゃる方が見受けられますので、簡単に関係性を説明していきます。
- 技能実習ビザ⇒実習生として来日し、人材育成・開発途上国への技術・知識の移転を目的とするビザ。あくまでも実習生なので労働力ではない。国際協力を推進することを目的としている。
- 特定技能ビザ⇒上記説明通り人手が足りていない産業に対し、労働力の拡充という意味合いが強いビザ。
この様に、ビザのコンセプトが大きく異なります。なお、技能実習生2号を良好に修了した場合には、特定技能ビザに変更することができます。
他の就労ビザと特定技能ビザの違い①
就労ビザの代表格として【技術・人文知識・国際業務ビザ】(以下、技人国)がありますが、このビザと特定技能では、できる仕事内容が大きく異なります。
在留資格:技術・人文知識・国際業務(技人国)~就労ビザの代表~
では具体的にどの様な差があるか説明します。
飲食店を経営する会社を例に挙げます。技人国は基本的にホワイトカラーの業務に従事することを想定しているため、ホールでの接客業務やキッチンでの調理業務などは認められません。一方特定技能の場合は、それらの様な業務に従事することが可能です。
建設会社で見れば、技人国では工事現場で現場作業を行うことは認められませんが、特定技能では工事現場での作業は可能です。
この様に、従事できる業務内容で現場作業が認められるというのが一番の差です。
他の就労ビザと特定技能ビザの違い②
在留期間にも差があります。
技人国では更新に制限がありませんので、更新ができる限り技人国ビザで在留することが可能です。一方特定技能ビザは通算5年間までしか更新はできません。これは、他の分野に移った場合(介護⇒飲食など)でも同じですし、間に他の在留資格への変更をしていたとしても同じです。ですので、特定技能で通算5年目になる方は、別の在留資格に変更しないとそれ以上の更新が認められず、日本に在留することができなくなります。
他の就労ビザと特定技能ビザの違い③
雇い入れる側(受入れ機関)の体制にも違いがあります。技人国では、通常の日本人と同様に雇い入れることが可能です。もちろん雇い入れた後ハローワークに届け出を出す必要はありますが、それ以外はほとんど変わりません。
一方特定技能の場合には、受け入れ側にサポート体制があることが求められます。
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会提供
- 日本人との交流促進
- 相談・苦情への外国語対応
- 転職支援(会社都合で雇用契約を解除する場合)
- 定期的な面談、行政機関への通報
これらは10項目は義務的支援とされ、受入れ機関が必ず実施しなければなりません。自社で対応できない場合には、登録支援機関に委託することとなります。
また、この他にも
- 法令の遵守
- 悪質な紹介業者を挟んでないこと
- 同一の業務に従事する日本人等と同等以上の給与であること
- 給与を預貯金口座への振り込み等で支払うこと
- 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させること
- 帰国の際に、外国人が旅費を負担できなければ受入れ機関が負担をすること
が受入れ機関には求められます。
他の就労ビザと特定技能ビザの違い④
他の就労ビザとは異なり、原則として特定技能1号では家族を本国から呼び寄せることはできません。特定技能2号では可能になります。
一部例外ではありますが、家族の在留が認められるケースもあります。例えば技術・人文知識・国際業務ビザで日本で働きながら家族と一緒に住んでいた方が、特定技能ビザに変更した場合などです。その場合、今まで家族滞在ビザを持ち日本で生活していたご家族の方は、特例的に特定活動ビザへの変更が認められ、引き続き日本で生活できる可能性があります。
以上が他の就労ビザとの特徴的な違いです。
要件
次に、特定技能の申請をする上での要件や注意点をご説明します。
この要件は、申請人本人と受入れ機関とで分けて考えた方がわかりやすいです。
申請人本人
- 18歳以上であること
- 健康であること
- 雇用される産業分野の技能試験に合格している
- 日本語の試験に合格している
- 税金や保険料などの滞納が無い、在留状況が良好である
他にも多少細かいことはありますが、ほぼこの5つです。技能試験や日本語試験に関しては、技能実習2号を良好に修了していれば問題ないです。例外として、技能実習を行っていた分野と違う分野で特定技能を申請する場合には、その分野の技能試験に合格しなければなりません。また、介護分野においては、介護分野の日本語試験があるので、別途それに受からなければなりません。
受入れ機関
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
- 受入れ機関自体が適切であること
- 外国人を支援する体制が整っていること
- 外国人を支援する計画が適切であること
大きく分けるとこの4点となります。さらにこれを細かく見ていくと、
- 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する従業員を非自発的に離職させていないこと
- 1年以内に行方不明者を発生させていないこと
- 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がない、禁錮以上の刑に処せられていない等)に該当していないこと
- 外国人が保証金の徴収等をされていることを認識して雇用契約を締結していないこと
- 受入れ機関が外国人と保証金や違約金の徴収等を定める契約をしていないこと
- 支援費用を、直接または間接に外国人に負担させないこと
- 雇用契約を安定・継続的にできる体制が整備されていること(会社の財務状況が健全である)
- 直接雇用であること(農業・漁業は派遣も可)
- 分野に特有の基準に適合すること
となります。これは上記1~4の1と2についてです。
これに加え、3と4では以下の事が求められます。
- 過去2年間に中長期在留者の受け入れ、管理を適切に行った実績を持つ者。または過去2年間で中長期在留者の生活相談などに従事した経験を持つ者。もしくは人事部などが存在する上場企業で、中立な立場である役職者を支援責任者・支援担当者として選任できること
- 外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を確保していること
- 支援状況に関わる文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備え置くこと
- 支援責任者又は支援担当者が、支援計画の中立な実施を行うことができ、欠格事由に該当しないこと
- 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
- 支援責任者又は支援担当者が、外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することのできる体制を有していること
となります。
細かく書くときりがないので代表的な要件を書きましたが、これだけのことが受入れ機関には求められます。自社で対応するにはすべて自社で基準を満たす必要がありますが、登録支援機関に支援を委託すると、3と4を満たすことになります。
また、この他にも受け入れた後には出入国在留管理局長官に対し、各種届出を随時又は定期的に行わなければなりません。
以下出入国在留管理局の該当ページのリンクです。
在留資格「特定技能」 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
特定技能外国人の雇用を希望する企業・団体・個人等の方 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
まとめ
今回は在留資格【特定技能】について説明しました。
どうしても複雑な部分が多く、すべてをかみ砕いて説明するのが難しいビザです。また、出来て間もない在留資格のため、これからどんどん制度が変化していくと思います。14分野から12分野に減ったのは良い例です。
何かご不明点、ご相談などあればお気軽にお問合せフォームよりお問合せください。
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