技能実習制度廃止のニュース
2023年4月10日に『技能実習制度の廃止 新制度への移行』というニュースが流れました。
「技能実習制度を廃止 新制度へ移行を」政府の有識者会議 | NHK | 技能実習生
厳密に言うと、政府の有識者会議にて技能実習制度の廃止と新たな制度への移行を求める中間報告のたたき台が示されたというものです。
技能実習制度は開始から約30年となりますが、ここにきて大きな変更を求められることとなりました。今回は技能実習制度について大まかな説明と、廃止を求められるに至った問題点などについて解説すると共に、今後どのような制度へ姿を変えていくかについて考えていきたいと思います。
技能実習制度とは
そもそも技能実習制度とはどの様な制度なのでしょうか?
古くは1960年代にさかのぼりますが、日本の大企業が海外の現地法人などで社員教育として行っていた研修制度が起源とされています。
その後70、80年代に入り、この研修制度は発展を遂げていくのですが、この研修制度の多くは発展途上国側からの要請に対応するという形で行われていました。研修内容は、現地事業所の生産性の向上や、周辺の産業社会への社会貢献を目的とする受入れであり、日本国内の労働力を補うという観点で始まったものではありません。
一方このころ日本の中小企業では、段々と人手不足に陥っており、自分たちも研修生を受け入れたいと考えるようになりました。しかし、今までの研修制度は海外に現地法人を持つような大企業しか行えていなかったため、新しい仕組みを考えなければいけませんでした。
そして1993年に技能実習制度が創設されました。当初は在留資格【研修】で1年間技能の習得を行い、その後在留資格【特定活動】で技術の向上を図る、つまり現在で言う技能実習生として働くというものでした。在留資格としての【技能実習】が創設されたのは2009年のことです。
ここで問題となるのが在留資格【研修】というものでした。在留資格【研修】では、給与を受け取ることは禁じられているため、日本に来た在留資格【研修】を持つ方々は、生活実費としてもらう研修手当しか得ていませんでした。これが大体6~7万円前後であり、時給換算すると300円程度でした。その頃の在留資格【研修】は、現在の在留資格【研修】とは異なり、実務研修が認められていました。その結果研修生は実務研修という名目で他の日本人従業員と同様な労働に従事しているケースが多く、その上禁じられている残業まで行わせているということもありました。在留資格【研修】は非就労系在留資格として設けられたため、研修生は労働者ではないという扱いであったため労働法の外の存在であり、そして残業代を支払われることはなく、働かせ放題というめちゃくちゃな状況になっていきました。
2010年に改正入管法が施行され在留資格【技能実習】が動きだしました。これにより、最低賃金や社会保険が適用されるなど労働関連法の対象になりました。
その後2017年に『外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習実習生の保護に関する法律(技能実習法)』が施行され、今日の技能実習制度となっています。
何が問題だったのか
現時点でどのような点が問題視され廃止を求められているのでしょうか。
まず問題点の一つとして、現在の実情との乖離が挙げられます。この技能実習制度は、今も昔も発展途上国の人材育成を目的としていますが、実際は労働環境が厳しい業種を中心に人材確保の手段になってしまっています。
問題点の二つ目は転職が禁止されている事です。この規定により、他の職場に移りたくても移れないため、職場から逃げ出してしまったりという事例も後を絶ちません。
問題点の三つ目は、監理団体への行政処分の多さです。監理団体は実習生を受け入れた企業に対し適切な監査・指導を行う立場ですが、それらを怠り行政処分を受ける監理団体が相次いでいます。
今後の制度について
上記のような問題点を踏まえ、どのように制度が変わっていくのでしょうか。
新たな制度では人材育成だけではなく、働く人材の確保を主な目的に掲げ、今までは原則禁止だった転籍も一定程度認める方向性であるそうです。また、監理団体に対しても、企業からの独立性の確保など要件の厳格化がされる予定です。他にも在留資格【特定技能】に繋げやすい仕組みにするなど色々意見が出ています。
最終報告は今年の秋ごろに出される予定ですので、出たころにまたこのようにまとめてみたいと思います。
まとめ
今回は2023年4月10日の『技能実習制度の廃止 新制度への移行』ニュースを受けて、簡単に技能実習制度の歴史を交え解説しました。
何かご不明点、ご相談などあればお気軽にお問合せフォームよりお問合せください。
川崎・横浜エリアのビザ申請なら
And-U行政書士事務所
2件のコメント
コメントはできません。